国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
第七章 母の仇
今朝、目が覚めた時から城内がどことなくざわついていた。

ミリアンはいつものように朝食を終えると椅子に座る。そして、先ほど許可を得て書庫から持ってきた植物について書かれている数冊の本を広げた。

(今日はなんだか忙しないわね……)

足早に廊下を走る音や慌ただしく誰かを呼ぶ大きな声が聞こえる。ここは比較的静かな所なはずなのに、ミリアン自身もなんとなく胸騒ぎを覚えてならなかった。

(とにかくあの花のことを調べなきゃ)

かび臭い厚手の表紙をめくりパラパラとページをめくる。昨夜見た花の形は今でもはっきり覚えている。花の特徴が書かれている箇所に目を凝らしながら読み進めていく。しかし、どんなに時間をかけても一冊目にも二冊目にも名もなき花についての記載はどこにも見当たらなかった。

(もしかしたら、この大陸の花ではないのかしら……?)

遠い異国の花だとしたら本に載っていない可能性もある。ハァ、と重いため息をついて本を閉じたと同時にドアがノックされた。

「はい」
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