国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「刺した刃にどうやら特殊な毒が塗り込まれていたようでな……傷口自体は大したことないのだが熱発してどうも具合がよくない。うわごとのようにお前さんの名前を呼んでいる」

ラウラスの話によると、レイは城にたどり着いた途端に意識を失ったという。医師による処置を施し、いったん落ち着いたと思いきや今度は高熱にうなされているとのことだった。

「それで私を呼びにいらっしゃったんですか?」

「あぁ。お前さんの顔を見れば案外正気付くかと思ってな。しかし、そんな冗談もいつまで言っていられるか……わしもありとあらゆる解毒を試みたが……」

その口調からその解毒もさほど効果がなかったのだとミリアンは察した。

(レイ様……)

自分に何かできることはないか、どうしたらいいのか、と考えを巡らせる。

「あの、ラウラス様」

「なんだ?」

「レイ様の温室に、咲かない花があるのをご存知ですか?」

ミリアンはふとあの名もなき花の事について、薬師ならばもしかしたら何か知っているかもしれないと一縷の望みをかけて尋ねた。
< 158 / 295 >

この作品をシェア

pagetop