国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「こっちです」
昼間の温室は太陽の光を反射して、流れる噴水の水が煌めいていた。羽を休めていた蝶がミリアンとラウラスの気配に驚いて葉の上から飛んでいく。枝をかき分けて名もなき花の場所へたどり着くと、昨夜よりもさらに花の数が増えていた。青白い花弁は朝露の残りでほんのり湿り気を帯び、美しく甘い香りを漂わせている。しかし、初めて見た時の花はたった一晩だというのにすでに花弁が褐色化し枯れかけていた。
「おぉ。いつまでも花をつけない不愛想な植物だと思っていたが……。まさか……この花は――」
ラウラスが花に近づいて、顎に親指と人差し指をあてがいながらしげしげと眺めている。
「ラウラス様、この花のことご存知なんですか?」
「知っているも何もこの花は……あぁ。わしの思い違いでなければカウラという幻の花だ」
ラウラスは目の前で咲いているその花を瞬きもせずルーペを通して信じられないというような目で見つめていた。
「カウラの花?」
聞いたことがない。初めて聞く名前だ。するとラウラスはルーペをポケットにしまい、自分より背の高いミリアンを見上げた。
昼間の温室は太陽の光を反射して、流れる噴水の水が煌めいていた。羽を休めていた蝶がミリアンとラウラスの気配に驚いて葉の上から飛んでいく。枝をかき分けて名もなき花の場所へたどり着くと、昨夜よりもさらに花の数が増えていた。青白い花弁は朝露の残りでほんのり湿り気を帯び、美しく甘い香りを漂わせている。しかし、初めて見た時の花はたった一晩だというのにすでに花弁が褐色化し枯れかけていた。
「おぉ。いつまでも花をつけない不愛想な植物だと思っていたが……。まさか……この花は――」
ラウラスが花に近づいて、顎に親指と人差し指をあてがいながらしげしげと眺めている。
「ラウラス様、この花のことご存知なんですか?」
「知っているも何もこの花は……あぁ。わしの思い違いでなければカウラという幻の花だ」
ラウラスは目の前で咲いているその花を瞬きもせずルーペを通して信じられないというような目で見つめていた。
「カウラの花?」
聞いたことがない。初めて聞く名前だ。するとラウラスはルーペをポケットにしまい、自分より背の高いミリアンを見上げた。