国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「わぁ、いい匂いですね。僕、この花初めて見ました」

興味津々にヨークが覗き込む。微調整しながらラウラスはゆっくりとかき混ぜて言った。

「これはカウラという花だ。ヨーク、一生のうちに見ることができて幸運だったな」

「カウラの花!」

花の名前に覚えがあったのか、ヨークが驚いた声で花の名前を口にした。

「僕、おじいさまの本で見たことあります。亡国ソルマンテの国花なんですよね? しかも開花が難しくてその術をなせるのは――」

「ヨーク、無駄なおしゃべりだぞ」

ラウラスに窘められるとヨークはしゅんとなり、口を噤んだ。

「ソルマンテ王国って?」

どこかで聞いたことのあるような、ないような名前にミリアンが気になってラウラスに尋ねる。すると、ラウラスは気まずそうな表情で煎じ終わったカウラの花弁をこした。

「ミリアン殿、ヨークの話は気にしないでくれ。ほら、できたぞ、荒熱が取れたら完成だ。すぐにでも国王陛下の元へ持っていくといい」

「ありがとうございます」

ラウラスはこされたものを瓶に移し替えるとミリアンに手渡した。
< 164 / 295 >

この作品をシェア

pagetop