国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「何事だ」

背後から声がして振り向くと、兵士とミリアンの声を聞きつけたセルゲイが歩み寄ってきた。

「セルゲイ様。ミリアン様が陛下の私室へ行きたいと言って――」

「お前は下がっていろ、この娘は私が引き受けよう。それから国王陛下のお叱りを受けたくなければ、この者をぞんざいに扱うな」

「はっ! 申し訳ございません」

足止めしていた兵士が電流が走ったかのように背筋を伸ばして敬礼すると、すぐさまその場を後にした。

「ラウラスから薬を預かったと言っていたな?」

「はい。カウラの花を煎じたものです」

ミリアンは大事に抱えていた瓶を見せると、セルゲイの眉がぴくりと跳ねた。

「カウラの花だと?」

カウラの花を聞いて、いつも表情を崩さないセルゲイが驚いてミリアンを見た。

「それは確かか?」

「はい」

「陛下の部屋へ案内しよう」

セルゲイがミリアンに背を向けると急ぎ足で廊下を歩きだした。その後にミリアンも続く。

「あの、セルゲイ様もカウラの花をご存知なんですか? レイ様のご様子は?」

セルゲイにおいて行かれないよう、その背を追いかける。ミリアンは小走りになりながら矢継ぎ早に問うと、セルゲイはしばらく口を閉ざしていたが階段を上ったところでぽつりと言った。
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