国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
第八章 ジェイスの誘惑
赤い焔が夜闇に揺れあがり、人々は戦々恐々として縮こまっている。

――私は、この人を守れなかった。

目の前には、剣が深々と背中に突き刺さった女。彼女の持つ金色の流れる髪は、まだ生気を残して輝いている。

――お母様!

炎に囲まれた小屋の中から声がして、まさかまだ人がいるのかと思い視線をあげる。揺らめくフードから見えたのはまだ年端もいかない少女の姿だった。遠目だったが、その瞳には母親の死への絶望、恐怖、そして憎悪が滲んでいるように見えた。
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