国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
第九章 リムル国王の告白
翌月になると冬の寒さも幾分か和らぎ、ほんの少しずつ春の気配が感じられるようになった。ラタニアの庭園の花々は一層色付き、柔らかな風に運ばれてその花の香りがミリアンの部屋にも微かに届いていた。しかし、ミリアンにとっては重大な一大決心を迫られていた。

――遅効性だけど、ただの催眠効果のある実だよ、この実を砕いて粉末にしてから使うんだ。

先日、ジェイスかあそう言われて受け取った実だったが、まだそれは原形をとどめたままだった。

母の仇を討つことに迷いはない。案の定、ジェイスが言っていた通り、今月行われるガンタール王国の建国記念日に同行するようにと、ジェイスと会ったあの夜から数日後にレイがミリアンの部屋を訪れそう言ってきた。

――殺したいくらい、憎いわ……私はこの手で母の仇を討つまで、あなたを狙い続ける!

そうはいったものの、嫌悪感をむき出しにしていてはレイも隙を見せなくなる。だからミリアンは胸の内を隠し、従順に接するようにした。そして母の仇を取ることを胸にミリアンは自分の目的を果たすためにふたつ返事で了承した。
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