国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「ミリアン!」

ビクリと全身をしならせ、ミリアンは勢いよく開眼した。飛び込んできたのは心配そうに覗き込むずぶ濡れになったレイの顔。彼の黒髪の端からぽたりぽたりと雫が滴り、頬に落ちる。目は開いたもののしばらく動けず、まずは生きていることを確認する。

「レイ……様」

わずかに動く口で彼の名を小さく呼ぶ。自分の声に聴覚が刺激され、抱き起されると次第に意識が鮮明になってくる。

ふと見ると、離れたところに飛び降りた塔が見えた。あんなところから……と思うと、生きていることが奇跡だった。

「怪我はないか? どこか痛むか?」

額にまとわりつく髪をうっとうしそうに掻きあげてレイはミリアンに問う。
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