国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
(この手紙、あの歌の歌詞に似てるわ……)

母から教えてもらった幸せになれる歌。別れゆく男女の歌詞だったが、あの歌詞は母とティアゴの恋物語だったのだ。愛し合っていたのに、引き裂かれてしまったふたりの切なさが伝わってくるようで、ミリアンは目頭に熱を覚えた。

「なるほどな。この手紙の内容を読んでようやく思い出した」

レイは震えるミリアンの肩を愛おしげに引き寄せた。

「父が病床に伏していた時、朦朧とした意識で口ずさんでいた歌があった。歌詞は聞き取れなかったが……おそらく、ミリアン、お前が唄っていた歌だ。だから、父上はあんなにも頑なにラタニアの国宝を持つ者を守れと私に……」

わずかにレイの語尾が震えている。レイの感情の揺れがミリアンの涙を一層誘った。
< 287 / 295 >

この作品をシェア

pagetop