国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
そして左手を取られ、短く水音を立てて甲に口づけられて吸われる。
初めは逃げ出したいほどに恐怖を覚えてならなかった。しかし、本当の彼の姿は国民を愛し、思慮深い人。想いをうまく口にできない不器用な人。レイ・ヴァリエ・リシャールという男は、本当は大きな海のような人だった。

「今度こそ聞かせてくれ……」

「はい……私もレイ様を愛しています。心から……自分でもどうしようもないくらいにあなたに溺れている」

紅潮した頬と薄桃色のぷっくりとした唇にレイの温かなものが性急に落とされる。

唇と唇が出逢い、互いの呼吸を塞ぐ。

「ミリアン、愛している。愛している……」

臆面もなく愛の言葉を連発されて、心臓が止まりそうになる。絡み合う唇はひと時も止むことなく互いを貪り、熱い吐息さえ深く混ざり合っていく。レイはミリアンの後頭部を引き寄せ、激しく口づけを深めた。屋外だというのに、湿った音が響くような濃厚な口づけ。

「あ……はぁ」

熱に浮かされ、恍惚としたミリアンは小さく喘いだ。
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