国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「申し訳ありませんでした。私のせいで逃げられてしまったんですよね?」
リコルタの草を密輸しようとしていた彼女のその後が気になり、ミリアンはレイに尋ねた。すると、レイは一瞬眉間に皺を寄せ冷たい口調で言った。
「逃げられた? ふん、私に目を付けられて逃げ失せられた者なんかいない。すぐに所在を抑えて国外追放した。あの女の家族がこの国にいようと、二度とこの地は踏めない」
(そ、そんな……)
ミリアンはほんの少しの間だったが、今も彼女の顔ははっきり覚えている。長い髪の毛をおさげに結って、まだあどけなさが残っていた。自分より幾分か年下に見えたが、決して大罪を犯すようには見えなかった。
「なんだ、お前、自分の置かれている立場よりもその罪人が気になるか?」
レイはミリアンの心を見透かすように鼻で笑った。
「いえ。ですが……彼女にもなにか事情があったのでは、と」
「今、お前がここにいるのは、その中途半端な正義感の結末だろう?」
レイはキメの細かい肌に整った顔立ちとなぜか心地よい声音をしている。男性を“美しい”と形容するには似つかわしくない表現が、なぜかこの男には似合うのが不思議だった。しかし、彼は冷酷だ。まるで温かみを感じない。なんの戸惑いも迷いもなく、毅然としているのは自身が確立しているという証拠だ。
リコルタの草を密輸しようとしていた彼女のその後が気になり、ミリアンはレイに尋ねた。すると、レイは一瞬眉間に皺を寄せ冷たい口調で言った。
「逃げられた? ふん、私に目を付けられて逃げ失せられた者なんかいない。すぐに所在を抑えて国外追放した。あの女の家族がこの国にいようと、二度とこの地は踏めない」
(そ、そんな……)
ミリアンはほんの少しの間だったが、今も彼女の顔ははっきり覚えている。長い髪の毛をおさげに結って、まだあどけなさが残っていた。自分より幾分か年下に見えたが、決して大罪を犯すようには見えなかった。
「なんだ、お前、自分の置かれている立場よりもその罪人が気になるか?」
レイはミリアンの心を見透かすように鼻で笑った。
「いえ。ですが……彼女にもなにか事情があったのでは、と」
「今、お前がここにいるのは、その中途半端な正義感の結末だろう?」
レイはキメの細かい肌に整った顔立ちとなぜか心地よい声音をしている。男性を“美しい”と形容するには似つかわしくない表現が、なぜかこの男には似合うのが不思議だった。しかし、彼は冷酷だ。まるで温かみを感じない。なんの戸惑いも迷いもなく、毅然としているのは自身が確立しているという証拠だ。