国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
やっとの思いで絞り出した声で尋ねると、ロパはミリアンに目も合わせず、申し訳なさそうに口を開いた。

「お前が国王陛下に謀反を企てたという噂が、一夜にしてすでに王都中に広まっているのだ」

「そ、そんな! 謀反だなんて、私……そんなつもりは――」

ない。とそう言いたかった。しかし、実際には知らなかったとはいえ、先日、剣を向けた相手がラタニア国王その人であったという事実は免れない。

「噂を信じている人ひとりひとりに、それは誤解だ。と言い回るつもりか? たとえそんなことをしたとしても全員がお前を信じてくれるとは限らないだろう?」

ロパとて、苦渋の決断だったのだろう。潤むミリアンの瞳を直視できず、ロパは終始俯いている。

ミリアンのことを調べ上げろと命じられたセルゲイは、即座に王都へ出向きミリアンについて調査を始めた。このラタニアでは罪人の調査など珍しいことではなかったが、あのピレネ食堂の金髪美人、ミリアンが調査の対象になったことで、噂は瞬く間に広まってしまったのだ。しかも、ミリアンは実際に兵士に連行されているところも王都住人に目撃されている。
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