国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
呼びつけた侍女にミリアンを連れて行かせ、レイはひとり玉座に座り考えていた。

昨夜、王都の巡回を終えたレイは捕らえたミリアンの様子を見に行こうと地下の廊下を歩いていた。すると、どこからともなくこんな薄暗い場所には似つかわしくない美しい歌が聞こえてふと足をとめ、思わず聴き入ってしまった。

(あの歌は……)

記憶のどこかで微かに覚えのある旋律だった。結局、ミリアンと顔を合わせることもなくその場を去ってしまったが、いったいそれをどこで聴いたのか、思いだせそうで思いだせない歯がゆさに、無意識にトントンと人差し指で肘掛を小突いた。すると、ロパを見送ったセルゲイが謁見の間に戻ってきた。

「ただいま戻りました、国王陛下」

レイの幼少期からずっと側近としてセルゲイは常に横に居る存在だった。
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