国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
そして翌日。

ミリアンは今、自分が置かれている現状に途方に暮れ、そしてあっという間に一日が終わろうとしていた。朝、目が覚めてから今に至るまで、この部屋を出ることもなく何をしていたのかさえぼんやりとしてしまう。

ラタニア城に仕えている侍従は数百人いる。その中のひとり、マリーアと名乗るミリアンと同じ年の女性が今日から身の回りのお世話をするというので今朝、朝食の準備と一緒に挨拶に来た。そして、食欲もないのに昼食と夕食を用意されたが、せっかく用意してくれたものを無下にすることはできなかった。

マリーアは同じ敷地内にある宿舎で暮らしながらラタニア城に仕えて三年になる。くせのある赤毛をキリッと結い上げ、濃茶の瞳は丸くて愛嬌があった。

「日が暮れてきましたね、なにかわからないことがあればなんなりとお申し付けくださいませ」

マリーアがそばかすの浮かぶ顔でニコリと笑うと、ミリアンにほっと安堵の色が浮かんだ。
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