国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
部屋にひとり残され、ふと窓の外を見てみる。王都に夜の帳が下りようとして、東の空が濃い藍色に染まっていた。窓辺の石椅子に腰掛け、膝を抱える。

『この澄んだこの瞳も、白磁のような肌も、そしてその歌声も……お前は美しい』

なぜかその言葉が頭の中に鮮明に残っていた。レイの表情はなんの感情もなく冷たかった。思い出すだけでも怖くて身を縮めてしまう。

(……歌声も?)

なんども頭の中でレイに言われた言葉を反芻していくうちに、なにか引っかかった。

(歌声もって、どうしてあの人が私の歌声を知っているの?)

(まさか……牢屋に閉じ込められていたとき見た人影は……)

『その歌は?』

『美しい歌声だ』

ミリアンは牢屋で見た人影とレイの声を頭の中で重ねようとした。低く、落ち着きのある声音。

(あれは……レイ様だったの?)
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