国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
(夜伽って……)

レイの言う夜伽は性欲処理を意味する。ミリアンはそれがわかって顔面蒼白になった。

「私、そんな魅力的な身体してませんし! レイ様を満足させることなど……」

「それは私が決める」

回された腕がするすると腰から下へ降り、尻の丸みを撫でられる。もう片方の手はミリアンの頬をなぞり、首に絡む髪の毛をさっと払った。すると一瞬レイの眉が曇る。

「これは、火傷の痕?」

ずっと髪の毛で隠していたあの忌まわしい火傷の痕に気づかれてしまった。手のひらくらいの大きさの痕だが、晒されれば目立つ。レイはその火傷の痕を目の当たりにすると苦々しげに目を細めた。

「離してください!」

勢いよくミリアンは掴まれた腕を振りほどくと、無防備になった首元を慌てて髪の毛で隠した。

(こんな火傷の痕なんか、見られたくなかったのに!)

火傷の存在は、思い出したくない過去を彷彿とさせる。

「何があったか知らないが……ほら」

レイが床に落ちたストールを拾い上げると、ふわっとミリアンの首に巻きつけた。

(レイ様……?)

乱暴にするでもなく、まるで大切なものを包むようなレイの所作にミリアンは彼を見上げた。
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