国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
(保護したわりには、あんまり懐いてないみたい……あ! そういえば)

この部屋に来る前にも似たような生き物を見た。きっと何かの見間違いだと思ったが、やはり目の前にそれと似たようなものがいると、気のせいではなかったと思わされる。

「私、さきほどこの子に似た生き物が窓の外を飛んでいるのを見たんです。すごく大きくて……」

「あぁ。おそらくそいつは緑竜の成竜だな。この国は唯一、竜が住まう国だ。竜が住む国は、永遠の栄華がもたらされると言われている。城の裏の森がこいつらの住処だ。日中はひっそりと暮らしているが、こいつらは夜行性で夜になるとこのあたりを飛び回っている」

(竜が住まう国? 本当にそんな世界があるなんて……)

ミリアンはラタニアに長年住んでいたが、まさかこの国に竜が住んでいるとは思わなかった。その小さな緑竜に視線を向けると、なにか言いたげにじーっとミリアンを見つめ返してきた。
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