国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
その頃、城の裏手では――。

「うわぁ!」

「やめろ! 死ぬぞ!」

森の木々をなぎ倒し、我を忘れて怒り狂った全長数十メートルもあろう巨体を揺らし、咆哮とともに炎を吐く。野太い尾が左右に大きく揺れるたびに構えていた兵士がいとも簡単に蹴散らされていく。その巨大な緑竜を前にレイは唇を噛んで為す術を考えていた。

「レイ様、致し方ありません! 弓兵を待機させました」

苦渋に顔を歪めるレイの横顔に、セルゲイがご決断を!と迫る。

「だめだ、こいつを殺してはならない」

緑竜は元々温厚な性格でむしろ臆病なほどだ。炎を吐くなどと滅多とない。見ると緑竜の目は血走り、鋭く、鎮静効果のあるミケルの実すら見向きもしないほど興奮している。このままでは多くの負傷者を出してしまう。しかし、この緑竜が暴れ狂っているのにはなにか理由があるはずだった。思い当たる節を見つけきれずにレイはその歯がゆさにもう一度唇を噛む。
< 91 / 295 >

この作品をシェア

pagetop