国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「お前、死にたいのか!?」

固く目を閉じていた瞳をうっすら開けると、身体に衝撃がなかった理由がわかった。

(レイ様……?)

ミリアンの身体をそのたくましい腕に抱きすくめ、眉間に皺を寄せたレイが近距離で険しく彼女を見下ろしていた。

(レイ様が私を……)

はらりと滑る黒髪が頬を掠ると、ミリアンはハッと我に返った。

「レイ様。ここは私に任せてくれませんか?」

「馬鹿な、お前に何ができる」

レイが身を挺してミリアンを緑竜の鋭い爪から守った。しかし、また襲われたら今度は本当に命に危険が及ぶかも知れない。何ができると言われたが、ミリアンは自分にしかできないことがあると信じていた。腕の中でブルブルと小刻みに震える小さな緑竜を撫で、再び攻撃をされる前にミリアンは素早く立ち上がる。

(お願い、私の話を聞いて)

冷たい空気を胸いっぱいに吸いこんで、数回深呼吸する。そして大きく口を開くと喉の奥から湧き出る旋律が歌声となって天を舞った。
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