国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
(あなたはこの子のお母さんね? 心を宥めて、森で怪我をしているところを保護されただけ)

この世のものとは思えないような歌声に、その場にいた兵士全員が動きをとめた。殺伐とした空気が徐々に穏やかなものに変わっていく。それは肌でも感じることができた。すると、今まで我を失って暴れていた緑竜の尾がゆっくりと下がり、鬼の形相で釣り上がっていた目も、次第に安らかさを取り戻していった。

(そう、子どもを連れ去られたと思ったのね? 怖がらないで、大丈夫。この子は無事よ、決してあなたに危害を加えたりしないから)

美しい歌の音が終わると、腕の中にいた小さな緑竜が身じろぎする。

「ほら、お母さんのところへ帰るのよ。今度は迷子にならないでね」

可愛らしく、まるでお礼を言うようにひと鳴きすると、小さな緑竜が翼を広げて母親のもとへと飛び立っていった。
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