国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「お前……」

その一部始終を見ていたレイは、夢を見ているような心地でミリアンを見つめた。

「今まで暴れていた緑竜はあの子のお母さん。子どもがいなくなって探していたみたいです」

「竜の言葉がわかるのか?」

「いいえ。でも、なんとなくそんな気がするだけです。あの、さきほどは庇っていただいてありがとうございました」

ミリアンが言うと、レイはふいっと目をそらした。

「別に、こんなところでお前に死なれたら困るのは私だ」

「え……?」

(どうしてレイ様が困るの?)

その言葉の意味がわからずその横顔を見つめる。気が付くと、緑竜の親子は暗い森へと姿を消していた。

「部屋に戻れ」

無事に保護した緑竜が森へ帰っていったというのに、レイの面持ちは沈んでいるようにも見えた。

(もしかして、あの子がいなくなって寂しくなった……とか?)

冷たい態度で接してくる男が、そのような感情を抱くのだろうか。あたりを見回してみると、大木が倒れ怪我をした兵士がうめき声を漏らしている。緑竜の残した爪あとは決して軽いものではなかった。
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