たとえ君が世界を嫌っても。
一度だけ、彼女が撮った写真を見せてもらったことがある。それが「アイツ」からっていうのが癪だったが。

 写真の中の俺は、何故かいつも中心にいなかった。

 まるで誰かが隣にいることを願うように、必ず左右どちらかの空間が不自然に空いているのだ。


 『その白に誰を入れるつもりだろうね』と。


 俺たちを嘲る笑みを浮かべたアイツを許せる日は、きっと来ないだろう。
 
 これは、触れることができない俺たちが見つけた唯一の隣に立てる方法だった。

 回想に耽っていると、いつの間にかシャッター音が止まっていた。彼女を見ると、白い瞳も俺を見ていた。

 「どうかしたか?」

 今日は問いかけてばかりだ。
 そんなことを頭の片隅で考えながら聞いてみる。

 彼女は何か言いたげに唇を震わせてから、俺からゆっくり目を背けた。
 
 「・・・なんでもない。」

 透き通ったソプラノが、言葉を濁す。
 
 それ以上の追及を防ぐように、もう彼女は俺を見なかった。
 

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