たとえ君が世界を嫌っても。

「じゃあな。また来るよ。」

 最後にもう一度声をかける。
 彼女は手を、ひらり、と振るとそれっきり興味を失ったかのように、無色の瞳に白に等しい灰色しか映さなくなった。

 なるべく足音を立てないように歩いて、白い楽園から抜けるための扉に手をかける。

 振り返っても、彼女の姿勢は変わらなかった。
 人に興味はない、世界は嫌いだ、と泣いていた彼女の過去が思い出される、そっけない態度。
 
 でも俺は知っている。

 たとえ君が世界を嫌っても、俺の事は愛したままでいてくれる。

 今は遠い、幸せだった頃と同じように。
 俺と同じように。

 だから、俺はきっと何度でも君に会いに行く。
 全てを終わらせるその瞬間まで。
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