極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
私たちは、目的地のひとつ手前で電車を降りて、ランチ処を探した。

あえて客先の最寄り駅を避けたのは、客先の社員や関係者に私たちの会話を聞かれたくないからだ。

うしろの席にクライアントが座っていることにも気づかずに、社内の情報や商談の計画なんかをペラペラと喋っていた、などという事態にならないために。

「まだハッキリと情報公開されたわけではないんだけれど、大口の新規顧客の案件が入ってきそうなんだ。今後、もしかしたら、俺たちはそちらにかかりきりになるかもしれないな」

見つけた雰囲気のいい創作和食屋さんで、窓際の四人席にゆったりと座りながら、私たちは仕事の話なんかをポツポツと交わした。

時間をずらして訪れたせいか、お客さんもまばらで、食事もすぐに出てきた。

その上、割とリーズナブルな値段で手の込んだ創作料理が出てくる。

けっこういいお店を見つけたかもしれない。
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