極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
本当に、なんとなくだろうか。それとも、私に見られてはまずいことが……。

「あ、後は私が剥きますんで、あっちで待っていてください!」

ごまかすように彼の手から包丁を奪うと。背中を押してキッチンを追い出した。

「あ、ああ……」

訝し気な目線を私に向けながら、彼は大人しくリビングのソファに座る。

もしもあれが浮気現場だったとすれば、神崎さんが警戒するのも当然だけれど。

……私、考えすぎだよ。

切り終えた私は、お皿にパイナップルとリンゴ、マスカットを飾り付けてリビングへと運ぶ。

私の不安なんてつゆ知らず、彼は果物を口に放り込んでは「久々に食べるとうまいな」と舌鼓を打った。

「……どうした、食べないのか?」

気がつくと、神崎さんに覗き込まれていた。ハッと我に返った私は、慌てて視線を逸らしてごまかす。
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