極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
今日は帰宅が遅くなってしまった。定時後、『神崎コーポレーション』からもらった発注依頼の資料を読み込んでいたのだ。

大きな案件であるため、把握しなければならないことも多い。

……神崎さんに聞いちゃえば早いのかもしれないけれど。

頼りたくない、という気持ちもある。クライアントが恋人であることに甘えてしまったら、反則な気がするからだ。

二十一時すぎ、帰宅の連絡を神崎さんにしてみると、すぐに返信が来て【俺もそろそろ帰るから迎えにいく】とのこと。

約束の時間に会社を出ると、少し離れた大通りに、彼の黒い車が停まっていた。

神崎さんの前にいっても、あくまで態度はいつも通りに。案件のことは知らない振りを。

逢沢さんには、こちらの動きを悟られるなと言われている。警戒しろ、とも。

自然に振る舞う……そう自分に言い聞かせれば聞かせるほど、体がギクシャクとして、右足と左足が一緒に出てしまいそうだ。
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