極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
コンコン、と助手席側のフロントガラスをノックすると、神崎さんがドアを開けて「おかえり」と迎えてくれた。

「迎えに来てくれて、ありがとうございます」

「……どうした? 変な顔してないか?」

いきなり見破られてしまい、ドキリとする。どうして神崎さんってそういうところは鋭いのだろうか。

「つ、疲れているせいですかね」

素知らぬ顔でとぼけるも。

「目が泳いでる。それから、声が裏返ってる。相変わらずわかりやすいなお前。なにかあっただろ」

どうしようもないくらいバレバレで悲しくなる。

とはいえ、後には引けない。なにを聞かれてもしらばっくれなければ。

「……別になにも」

わからない振りで助手席に乗り込むと、膝の上に乗せていたバッグから数センチはみ出した封筒を見つけて「なんだこれ?」神崎さんがすかさず手を伸ばし抜き取った。

「ちょ、勝手に! なにを……っ!」

「うちの社名入りの封筒がお前のバッグの中にあったら、そりゃあ気になるだろう。……ああ、契約の話か。お前のところまで情報が下りたんだな」

会って数秒で、こんなにも早くバレてしまうなんて。私って……。
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