極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
こうしてみると、さすがにこの若さで大企業を背負って立つ男、以前にも増した貫禄があり、少し前に肩を並べて仕事をしていた仲間だとは到底思えない。

神崎さんはゆっくりと立ち上がると、案内してくれた男性に「ありがとう。行っていいぞ」と立ち去るよう目配せをした。

男性が部屋を出ていくと、私と逢沢さん、そして神崎さんの三人だけになった。

さすがの逢沢さんも、この彼の威圧感を前にしていつも通りの態度は取れなかったみたいだ、「本日は、お招きいただき――」頭を下げ口上を述べようとするも。

「やめろってそういうの。いちいち場所を取るのが面倒だからここに呼んだだけだ。出向かせて悪いな」

緊張感をフランクな口調で吹き飛ばして、神崎さんは来客用のソファに腰を据えた。

「逢沢、久しぶり。……でもないか。数日前に会ったしな。じゃあ『いらっしゃい』か? こういうときはなんて言えばいいんだろうな」

はは、と軽く笑いながら、神崎さんは逢沢さんから私へと視線を移動する。
< 161 / 227 >

この作品をシェア

pagetop