極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
「君を好きとか嫌いとかじゃなく、そんな顔の女性がいたら――ましてや大切な部下だったら、家までちゃんと送らせてほしいと願うよ」

眼鏡の奥の瞳が真摯で、ああ、彼は本当に優しい人なんだなぁと思った。傷ついた人を放っておくようなことはしない、誠実な人だ。

もしも、彼が付き合ってほしいと言ってくれたあのとき、私が神崎さんを待つのを止め、彼と付き合うことを決めていたら、こんな苦しい思いはしなくて済んだのだろうか? 

優しい人の隣で、穏やかな毎日をすごすことが出来たのかな……?

それはそれで、幸せだったのかもしれない。

けれど、現実の私は、神崎さんのことを忘れられず、今も愛しているのは神崎さんだけだ。

だからこんなにも切なくて、やるせない。

目の前に幸せの種が転がっているかもしれないのに、勝ち目のない恋を選んでしまうなんて――私ってものすごく不器用な人間なのかもしれない。
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