極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
逢沢さんはコピー機の横にある備品のラックに背中をもたれながら、私を覗き込んだ。

「――やっぱり、神崎がいないと寂しい?」

その名前を出されるだけで、鼓動が早くなってしまう。

「寂しいなんて、そんなことは。ただ、神崎さんがいないとなんだかオフィスが平和だなぁと思って」

「あいつはなにかと、うるさかったからね」

物静かな逢沢さんにとっては、神崎さんの存在はうるさく感じられていたのかもしれない。

私にとっては、仕事の推進力そのものだったから、うるさいというよりは彼こそが指針だったのだけれど。

「……穏やかすぎて、落ち着きませんね」

「それを寂しいって言うんだよ。まぁ、仕方ないか。咲島さんは神崎にかわいがられてたから」

「……その表現、ポジティブでいいですね。実際は、毎日怒鳴られてただけなんですけど」

「愛情の裏返しだろう?」

「……だとよかったんですが」

残念ながらそうではない、と心の中でつけ加える。

確かに、日々コントのように叱られていたのは確かだ。

でも単純に私が手のかかる社員だったから彼の怒りを買っていただけだ。
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