極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~


彼がいなくなって一週間が経った。

私は残業続きで、土日もまともに休めていない。

今もデスクの上には、神崎さんの作成した私にしか解読できない難解な資料の山が積み上がっている。

「引き継ぎ資料くらい、もうちょっと丁寧に書いてよ! 引き継ぐ気ゼロでしょ!」

二十二時半、辺りに誰もいなくなったオフィスで、私はひとりパソコンをカタカタ叩きながら愚痴を吐いた。

残業対策だか節電だか知らないが、高層ビルの十九階にあるこのオフィスは二十二時で消灯してしまう。

真っ暗な中、パソコンのモニターから発せられるブルーのライトが目を直撃し、シパシパする。

結局、彼の引き継ぎ資料をまともに読み解けるものはおらず、私が彼の担当案件の大半を引き継ぐことになってしまった。

あまりにもオーバーワークな数件は、他の社員が引き取ってくれることになったけれど、まず私が単純化した手順書を作って作業を紐解くことが前提だ。
< 33 / 227 >

この作品をシェア

pagetop