極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
彼の行動は、私を愛しているというよりは、困らせようとしているみたいだ。

これくらい、できるよな? そんな挑発的な声が今にも聞こえてきそう。

そもそも〝かわいがる〟とか〝溺愛〟とかそういう単語が似合うような人ではない。

どちらかというと〝放任〟とか〝行き当たりばったり〟とか。

だからこそ、私は彼が口にした『愛してる』を信じることができなくて不安でたまらないのだ。

半年後、本当に彼は私のことを迎えに来てくれるのだろうか。

そんな嘘をつくような人とも思いたくないけれど――下手をしたら、約束ごと綺麗に忘れられていそうで。

「まぁ、神崎のことは置いといて、今は目の前の仕事を片付けよう」

「……はい」

私はブンブンと首を振り、余計な考えを振り払った。今はとにかく集中だ。

私たちふたり以外誰もいない静かなオフィスで、キーボードを叩く渇いた音だけがパチンパチンと響いた。
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