極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
恋人でもなんでもない上司に合鍵を渡すなんて、女性としてどうなのかなぁ、とも思うのだが、どうせほかに鍵を渡すような相手もいないことだし、今では彼も観念して鍵を持ち続けてくれているから、深く考えないことにする。

……それに、鍵を持ってくれているのが彼なら、私は全然嫌じゃないし、むしろ……。

勝手に頬が熱くなってきて、たまらず彼の首筋にきゅっと抱きついた。大きくて引き締まった彼の体を全身に感じて、余計にのぼせてしまいそうだ。

……おんぶしてもらえてうれしいなんて言ったら、彼、怒るだろうなぁ……。

エレベーターを待ちながら、彼はずり落ちてきた私を背負い直しては文句をこぼした。

「歩けもしないほど飲むなんて。俺に喧嘩売ってるとしか思えないな」

「いつもはギリギリ歩けますもんね?」

「『ね?』じゃない。それとも、これがお前なりの、俺への餞別か?」

胸がきゅっと痛んだのは、酔っぱらっているせいではないだろう。

こうして彼が私を家まで送ってくれるのは、今日で最後になる。だからこそ、こんなになるまでヤケ酒してしまったわけで……。
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