極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
結局私は丸一カ月もの間、終電帰りを余儀なくされてしまった。それ以降も、引き継がれた案件の対応に四苦八苦させられて、月日はあっという間にすぎていった。

気がつけば約束の半年なんてとうにすぎ、あまりにも時間が経ちすぎたせいで、今ではあの夜の出来事は本当に夢だったのではないかとすら思っている。

現に彼は一向に連絡をよこさないし、あの一夜を証明するものはなにもない、私の記憶以外は。

――愛してる――

甘いささやきと情熱的な声色、なまめかしい素肌。

待っていろだなんて、その場で出た嘘かもしれない。勢いで口にしただけ、とか。

それでも、彼の存在は私の心の奥深くに巣食っていて、なかったことにするなど、容易に出来ることではなかった。
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