極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
***


退社を決意したことがある。入社三年目のこと。

誰もいない会議室に神崎さんを呼び出して、差し出したのは〝退職願〟。

丸二年、神崎さんの下でやってきた。

顧客のところにも一緒に連れていってもらって、ゼロから指導を受けてきた。

神崎さんはスパルタ教育で有名だったけれど、怒られる内容は、どれも理由を考えれば当たり前のことだったから、嫌になったことはなかった。

なにが嫌になったかといえば、私自身に嫌気が差したというか、あるいは、人間そのものが怖くなったといった方が正しいかもしれない。

「先週のアレ、まだ引きずってるのか?」

「……申し訳ありませんでした」

「仕方ないだろ。お前だって反省してんだし、これ以上なにも言うつもりはない」
< 41 / 227 >

この作品をシェア

pagetop