極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
そんなことを知らない私は、ミスを犯した自分を激しく責めて、その上……。

『貴様の会社なんぞに、二度と発注するか!』

勢いが止まらなくなってしまったクライアントは、目の前にあった熱々のコーヒーの中身を私に向けてぶちまけたのだ。

――パシャ!!

咄嗟に私は目をつむった。

水音が響いたが、熱いとか痛いとか、そういう感覚はなく、気がついたら全身を誰かに抱きすくめられていた。

『……神崎……さん……?』

私の代わりにコーヒーを被ってくれたのは神崎さんだった。

咄嗟に私を抱きすくめ、守ってくれたのだ。

『――お言葉ですが』

神崎さんはクライアントの方へ振り向くと、静かに言い放った。

『うちの咲島の体は、システムよりも価値のあるものなので。傷つけるようなことはやめていただきたい』

情けないことに、私はその場で涙を流してしまった。

こんな問題を起こしてしまった自分が情けなかったのと、神崎さんに申しわけない気持ちでいっぱいだったこと。

それから、不謹慎にも、守ってもらえたことにじんときてしまって。

ああ、泣いてしまうなんて、営業失格だ……あの瞬間、私は退社を決意したんだ。
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