極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
「……基本的に俺は、辞めたいと言うやつを引きとめてやるようなお人好しではない。やる気のないやつをこれ以上とどめておいても、無駄だからだ」

ギッ、とパイプ椅子をならして、私に向き直りふんぞり返った。

なんとなく、彼はそういう性格だろうなぁと思っていた。厳しくて潔い人だから。

「……だが、お前の場合は例外だ。お前がいなくなると、俺が困る」

え? と思わず目を見開いた。

私がいないと困る? どうして? 私、神崎さんの役に立ったことなんて、一度も……。

「お前がいなくなったら、領収書の清算、誰がやってくれるんだ」

「は、はぁ……」

超雑務だ。

だが、普通は自分でやるものだし、誰も神崎さんの雑務を引き受けるような奇特な人間はいなかったから、仕方なく私が全部やってあげている。
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