極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
「そんなの、自分でやったらいいじゃないですか? たいした手間じゃないんですから」

「嫌いなんだ。頭を使わない仕事は。地味でイライラして、タバコが吸いたくなる」

「あれ? 神崎さん、タバコなんて吸ってましたっけ?」

「ここ何年か禁煙中だ。だからこそ困る」

はぁ、と私は首を傾げる。間の抜けた会話を経て、涙は完全に止まっていた。

神崎さんは腕と膝を組み、不機嫌な困り顔で、私をじっと眺めた。

「……覚えてるか? 面接試験のこと」

「面接……? 入社試験のときですか」

「ああ。たまたま順番が回ってきて、二次面接に参加させてもらった。そこに、お前もいた」

「えっ!」

全然気づかなかった。私は緊張でガチガチだったし、たくさんスーツ姿のおじさんが並んでいたから、ひとりひとりの顔なんてまともに見ていなかった。

そんな若い人、紛れていたっけ……?

気づかないくらい、余裕がなかったってことだろう。
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