極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
もしかして、話は終わりだろうか? 結局、どういう……?

混乱しながら神崎さんの後について私も席を立つと、彼は私に背中を向けたまま言い放った。

「しばらく、客先に行かなくていい。一年間、俺の下でひたすら領収書と納品書書いてろ」

私はポカンと口を開いた。

客先に行かなくていいって、どういうこと? 営業なのに客先に行かないで事務仕事をするの? それって謹慎処分?

なにも聞けずにいる私に、神崎さんは肩越しに振り返って言った。

「一年経って、それでも辞めたいと思うなら、今度は〝退職届〟持ってこい」

そう告げて、神崎さんはひとりでさっさと会議室を出ていってしまった。

会議卓の上には、私が書いた〝退職願〟が受理されぬままポツンと取り残されていた。
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