極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
そんなつもりはない、と言おうとしたが、100パーセントありませんでしたと、本当に言えるのだろうか。

心のどこかで、思っていたんじゃないだろうか、ああ、今日も、これで神崎さんが家まで送ってくれる、なんて……。

「……咲島さん」

声にハッとして目線を上げると、逢沢さんが真剣な表情で私をじっと見つめていた。

たまにこうやって、逢沢さんはドキリとするような視線を私に投げかけてくる。

真面目な顔つきの彼は、血の通わない人形のように美しく、冷徹で、見惚れると同時に背筋がひやりと冷たくなる。

こういうとき、だいたい彼の発する言葉は、私を深く悩ませるのだ。

彼はテーブルの上に手のひらを組んで合わせると、あらたまって私に向き直った。

「急かすようで申し訳ないんだけど、そろそろ返事を聞かせてもらえないだろうか」

「あ……」

 逢沢さんの要求に言葉を失った私は、膝の上に置いた手をぎゅっと握る。
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