極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
「驚かないんですか?」

「知っていたからね。彼は神崎コーポレーションの社長の息子だから」

ざわっと周囲がざわめく。

社長の息子――つまり、跡継ぎということだろうか。

「息子ならどうしてうちの会社なんかに。どうせ社長になるのなら、最初から自分の会社で働けばいいのに」

加藤さんのまっとうな疑問に、きっと誰もが心の中で同意しただろう。

逢沢さんはその答えについてもどうやら知っているようだった。

「もともと神崎は跡を継ぐ気がなかったらしい。弟に社長の座を譲って好き勝手するつもりだったそうなんだが、どうやら弟さんは経営者向きではなかったようでね。戻ってきてほしいと頼み込まれたそうだ」

「逢沢課長、詳しいんですねぇ」

「まぁ一応、彼の同期だし、後任だからね。退社の際に本人から直接事情を聞かされたよ」

ふたりのやりとりを聞きながら、私はぎゅっと手のひらを胸の前で握りしめた。
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