極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
逢沢さんは、全部知っていたんだ。

彼が退社に至った経緯も、この先、彼がどんな道を歩むのかも。

私には『愛している』とか『待っていろ』とか、本当かどうか疑わしいような台詞ばかり残して、詳しい事情はなにも教えてくれなかったというのに。

信用されてなかったってことだよね……?

彼と会えなくなった後の半年間、もしかしたら本気で彼の恋人になれるかもしれないと思っていた。

その後の半年でじわじわと期待が不安に変わって、そして今この瞬間、それはあきらめにも似た絶望へと変化した。

遠い人になっちゃったんだな。

彼は今や大企業の社長様。雑誌に載っちゃうくらいの有名人だ。どう転んでも恋人になれるとは思えない。

彼のことを忘れられずにいたけれど。これで踏ん切りがついた気がする。

ここまで身分が違うと、逆に清々しい。絶対無理だって、笑っちゃうほど実感できた。
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