極上恋夜～この社長、独占欲高めにつき～

やっぱり、彼のことはもう忘れた方がいい。

ぎゅっと目をつむって、胸の痛みに耐えていると。

「さぁ、みんな、もういいだろう。仕事を始めて。今日は残業ゼロＤＡＹにするよ。七時以降は許さないからね」

逢沢さんの号令に合わせて、課のメンバーたちはさぁっと蜘蛛の子を散らすように自分のデスクへと戻っていた。

私も緩慢な動きで持ち場に戻ろうとすると。

「咲島さん、ちょっといい？」

逢沢さんに声をかけられ、促されるようにオフィスを出た。

連れていかれた先は大人数用の無人の会議室。

中央にある大きな長机を使うには広すぎて、入り口の手前のスペースに私たちは立ったまま向き合った。

「神崎については、さっき話した通りだ。黙っていてごめん。一応、口外するなと言われていたから」

逢沢さんは申し訳なさそうに瞳を伏せて言った。