極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
「だから逢沢さんは、私に、神崎さんのことは早く忘れろって言ってくれてたんですね」

私のことを迎えにくるわけないって、きっと初めからわかっていたのだろう。

「それだけじゃないんだ」

逢沢さんが私に一歩近づいて、なだめるように私の両肩に手を置いた。

「こんなこと、俺の口からは言いたくはなかったんだけれど……」

私の顔を覗き込みながら、説得するように強い眼差しを向ける。

「神崎には結婚を考えている女性がいたよ」

「え……?」

ぐらっと視界が揺れて、危うく倒れそうになってしまった。慌てて逢沢さんが私の体を支えてくれる。

「大丈夫!?」

「……ごめんなさい、それは、どういう……」

聞き間違いだと思いたくて、すがるような瞳で逢沢さんを見つめた。

けれど、彼は沈痛な面持ちで目を伏せただけで、私の期待するようなことを言ってはくれなかった。
< 65 / 227 >

この作品をシェア

pagetop