極上恋夜～この社長、独占欲高めにつき～

彼が用意してくれた朝食は、トーストとスクランブルエッグ、サラダというシンプルなもの。

それでも、あの面倒くさがりな神崎さんが私のために朝食を作ってくれたのだと思うと、なんだかうれしくなってしまった。

朝食を終えた後、私たちは家を出る準備を始めた。

彼は私を家まで送ったあと、そのまま出社するつもりのようで、上質なブラックのスーツを身に纏うと空気が一瞬にして出来る男のそれに変わった。

「昔みたいに、ノーネクタイじゃないんですね」

あの頃の、シャツにベストを合わせた仕事スタイルが懐かしい。

凛々しすぎる神崎さんは、私の知る彼じゃないみたいだ。

「誰もいないときは、こっそりネクタイを外している。まぁ、だいたいは誰かがそばにいるけどな」

けれど相変わらずネクタイは嫌いなようで、よく見れば、締め方がちょっと緩い。その上、曲がっている。