はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
「それ、練習でずっと坂下先生が愛用してたやつ。

もう1人あげたい奴いたんだから、大事にしろよ?」



私が軽く頷くと、蒼は満足そうにステージに戻っていった。



アンコールには『手の上の心臓』という、グロいタイトルの曲を弾いた。



曲そのものは綺麗だったから、“心臓”じゃなくて“心”の方がしっくりするくらいだ。



手の上のピックを眺めながら思ったことは、1つだけ。



コレが、坂下の心だったら良いのに…。



後で知ったことだけど、元はクラシックの曲を蒼がアレンジしたらしい。



送別会の後、私の前を歩く女子生徒たちが坂下のことをキャーキャー言ってた。



後ろから睨みつけたら、騒いでいた生徒のさらに前を歩いてたアンジェ先輩が振り向いた。



蒼が言ってた「もう1人あげたい奴」は、きっと彼女なんだろう…。



私は、咄嗟に目を逸らした。












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