はつ恋【教師←生徒の恋バナ】

・若菜サイド

翌日、坂下から渡された書道具を持って喫茶店に向かった。



「昨日、ちょっと出かけるって言ったきり戻って来ないから、文ちゃんが心配してたよ。」



入った途端、マスターに言われた。



「あ、暗くなったから…。」



クスリに手出そうとして見つかったなんて、言えるわけない。



「そうだね、この辺は女の子が一人で歩くには危険だから、暗くなったら来なくて正解。

昨日なんか、馬鹿な売人がここに逃げ込んで捕まったよ。」



おそらく、昨日の男だろう。



私は床に書道具と和紙をセットし、墨をすりながら、マスターの話を聞いた。



「若菜ちゃん、それ何?」



「何って…、昨日言ってた壁に飾るもの書くんだけど?」



「誰が?」



決まってるじゃん…。



「マスターが。」



「勘弁してよ。

あまりにも字が下手過ぎて、税務署の調査の人が困ってたくらいだし…。」



「税務署って…、まさか脱税してるの!?」



「払う税金ないくらい儲けないのに、脱税なんかできるわけ無いよ…。」



よく考えたら、そうだよね…。



「そういう訳だから、若菜ちゃんが書いてよ。」



やっぱり?



そうなるかな…とは、思ってた。








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