はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
夕方、翠子を門扉まで見送る。



「今日は突然押しかけて、ごめんなさいね。」



「謝んなくて良いよ、もう。

母も自慢の点前披露できて、満足してるみたいだし。」



「私は、若菜さんが点ててくださったお抹茶の方が好きよ。」



「あ…、ありがと。」



例えお世辞でも、そう言われると嬉しい。



「今度、私の家にいらしてくださる?」



別に断る理由もないから、頷いた。



「約束ね。」



翠子はそう言うと、首に下げていたロザリオを外し…。



私の左手首に、それを巻いた。



翠子が、お迎えの車に乗り込む。



「あっ、翠子さん…コレ!」



私が自分の手首に巻かれたロザリオを指差すと、翠子はこう言い残して去った。



「若菜さんに、持っていて欲しいの。」



私が翠子んちに行く時までの、約束の証…ってこと?



聖女の生徒は、約束ごとをするのにロザリオを預けるんだ?



女子校独特の儀式は、こそばゆくて…ちょっと苦手。



でも、キラキラして…綺麗。



私は、緑色の珠が連なっているロザリオを眺めた。







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