はつ恋【教師←生徒の恋バナ】

・澤弥サイド

このお祭り騒ぎが終わると、受験一色の生活が待っているワケだが…。



明日までは、そんなこと一切考えないで遊ぼうと思う。



登校途中で優とバッタリ会い、一緒に校庭を歩いていると、中から激しい物音がした。



気になって中を覗いてみると…。



鍵のかかる指導室で、カーテンに包まれたモノに蹴りを入れる体育教師がいた。


アイツ、昨日の体育祭で同じチームになった2年の担任だ。



窓から覗いてる俺たちに気づいてないのか、執拗に何か蹴っている。



「おい、優。

アレって、人…だよな?」



カーテンの隙間から手のようなものがほんの少し見えた気がして、優に聞いてみた。



優は右手で黒縁メガネを持ち上げ、目を凝らす。



「桐生…。」



桐生って、俺の中では5本の指に入るくらい髪の綺麗な桐生若菜ちゃんのこと…だよな?



優が血相変えて走り出すから、俺も後に続いた。



それにしても、学校始まって以来の才媛と謳われた桐生ちゃんが、あんな目に遭う理由が分からない…。



「優、あのカーテンの塊が何で桐生ちゃんだと?」



「翠子のロザリオ!」



んな下らない質問に答えてる場合じゃ無ぇよ!



なんて言いたそうな口調で、律儀に答える優。



土足で廊下を走り、職員室のドアを乱暴に開ける。



教師たちが目を剥くが、今は構う気は無い。



この段階で優は息切れしてて、喋るのも大変そうだ。



俺は、桐生ちゃんのクラスの副担任に詰め寄った。



「桐生ちゃんが担任に暴行受けてるって、どういうことだよ!?」



間抜けな副担任はワケ分かんないのか、間抜け面のままで俺を凝視した。








< 220 / 286 >

この作品をシェア

pagetop