はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
翌日、授業が終わってすぐに深夏を連れて、あの病院へ向かった。



「ねぇ、ワカ。

スクープって何?」



このセリフ、今日1日で何度聞かされただろう?



既にエレベーターに乗り込み、目的地は目と鼻の先だというのに、深夏は食い下がるように聞く。



「まさか、坂下先生が入院してる病院が分かった…なんて程度じゃないよね。」



そんな程度だったら病院名教えるだけで、こんなとこまで来ないし。



「ミカ、悪いけど…もう静かにしてくれないかな?」



エレベーターが坂下の病室があるフロアに到着したので、深夏を黙らせた。



私たちは、病室から一番近い物陰に隠れる。



『待機』



携帯のメール作成画面を、深夏に見せる。



しばらくは、これで遣り取りする。



隠れることほんの10数分で、アンジェ先輩はやって来た。



どうやら彼女は放課になった途端、急いでここに来るのが習慣になってるらしい。



放課前のHRを、サボって正解だと思った。



『カメラ準備。シャッター音、フラッシュに注意!』



アンジェ先輩が、病室のドアを開ける。



深夏は物陰から飛び出すと、ドアが完全に閉まる前にストッパーを差し込んだ。



さすが深夏、物音1つ立てずに中を窺うだけの隙間を作りあげた。



中から



「和さん。」



なんて声が聞こえた。



坂下、下の名前で呼ばせてるワケぇ!?



私は覗きたく無かったが、深夏の手前もあるし、そうもいかない。



覚悟を決めて、隙間から中を覗いた。












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